電装強化?
〜 ステータ巻き直し大作戦 〜


エサンテカの21w HIDに飽きたら・・

■ 経 緯 ■

KSRのショボい発電機ではサンヨーテクニカの21wHIDを取り付ける事は
難しいと思っていました、ところがアイドリング時でも点滅状態になることもなく
安定して使えています。

しばらくは優越感に浸りつつ自己満足していましたが・・・
慣れてしまうと21wという中途半端な明るさでは満足できなくなって
きます、手軽に誰でも手に入れられるポン付けパーツを使用するのではなく
だれも挑戦したことの無いような方法で、35wHIDを点けてみよう!・・・

こう考えるのも自然な流れではないでしょうか?w

■ KSR電装考察 ■

とりあえず、どのような構成で電装を強化するか考えてみます・・・

電装強化で一番最初に思いつくのが、ステータコイルの巻き直しです。
学生の頃、理科や物理の授業で勉強したと思いますが、磁力線を電気伝導体が
横断すると誘導電流が発生します。

この誘導電流を効率よく発生させるように磁石やコイルと鉄芯を組み合わせたも
のが発電機です、巻き数を増やしたり強力な磁石を使うことで発電量が増える
ことはご存じのとおりです。

KSRではレフトエンジンカバーの中のフライホイールに永久磁石(マグネトー)、
さらに内側にステータコイルが存在し、単相交流電流を発電しています。

KSRの電装を強化するに当たり、発電した電気がどのような経路で消費されて
いるのか、サービスマニュアルの配線図を調べてみました。

ノーマル回路
純正回路概要図

←ノーマル電装の簡略化した図

KSRの電装はライティング系とチャージング系に分かれており、ライティング系にのみレギュレータが存在します、(余剰電圧をアースに逃がすサイリスタです)
チャージング系は、レクチファイアで半波整流された直流がダイレクトにバッテリーに入力しています。
バッテリー自体の定電圧特性を利用した旧車に多い設計です。
バッテリーがよくダメになるのもうなずけます。

改造後の回路
改造回路概要図

 ←レギュレートレクチファイアを使うことで、ライティングチャージング共に安定した直流電流を供給します。

ノーマルコイルの一端はアースされていますが、両端共にレギュに入力することにします。

すべての電装をバッテリーからの電気でまかなう自動車と同じ回路設計です、回転数による電圧の昇降が発生しにくいので、タコメータなどの社外電装を装着するにも有利です。

レギュレートレクチファイアの選定
CBXのレギュ
 直流化に向けて重要なパーツの一つに、レギュレートレクチファイアがあります。

KSRは単相交流発電のため、単相交流用のレギュレートレクチファイアを探さなくてはいけません。

125cc以上のバイクの大半は三相交流式の発電機なため、レギュレートレクチファイアも三相交流用のモノがほとんどです。

ヤフオクの膨大な出品からそれらしきレギュレータを見つけ出し、使用することにしました。

←CBX250カスタムのレギュを採用!(たぶん125でも同じ)

おそらく三相交流用レギュを使っても大丈夫だと思いますが、変な波形になりそう。
スクーターなどに使われる小型なものは半波整流なのでダメっぽいです。

レギュレートレクチファイアの考察
レギュとの接続 
←入手したレギュレータは左図のように接続します。

ホンダ車のサービスマニュアルを見るとレギュレータの配線カラーには次のような法則性があります。
 : 交流線(桃色の場合あり)
 : 直流線(プラス線)
 : アース線(マイナス線)
黒 : 電圧検出線

〜 KSRとの接続 〜
黄線→ステータコイルの両端に接続
赤線→KSRの白線に接続(常時電源)
黒線→KSRの茶線に接続(ACC電源)
緑線→アース線に接続 (ボディーアース可)

これでイグニッションキーONでライトが点灯する
直流KSRができあがるハズです。
ステータ巻き直しの実際

エンジンにマウントされたステータコイル
 KSRのステータはB1〜B4までの前期型とB5以降の後期型の2種類あります。

B1〜B4のステータは鉄芯が一本です、巻き直しには向きませんので、B5以降の3極タイプを使用します。(左写真のタイプ)

KSRの発電機には大した発電能力は無いようですが高回転時の電圧を抑制していないため、 過電圧でバッテリーがすぐダメになるみたいです。

特に後期タイプのステータは初期タイプのものより若干発電能力が高いためか、カワサキから対策部品(レギュレータ)が供給されるほど。

ステータを取り外す

ステータ台座から分離
  レフトエンジンカバーを外し、フライホイールを外します。(エンジンオーバーホール参照)

するとステータが見えるので、ハーネスと3本のナベネジ(+)を外しエンジンからステータを取り外します。

外したら室内にもちこみ、半田ごてでコイルとハーネスを分離。(桃・黄・黒の3本)

鉄芯を固定している4本のナベネジ(+)を外し、ステータ台座と鉄芯を分離します。

←鉄心とステータを分離した状態。

※点火コイルを外す必要はありません!

コイルを解(ほぐ)せ!

ワニスを砕きつつコイルを解す
 ノーマルのステータには銅線を保護するための充填材としてワニスが塗り固めてあります。

ワニスをマイナスドライバーなどで砕きながら巻かれたコイルを解していきます、結構根気のいる作業です。

ワニスの破片はガラスの破片並に鋭いので、気をつけて解していきます。


巻き数がわかっていれば、リューターで一気に切断してしまうのですが・・・

鉄芯

 無事古い銅線を解し終わりました。


当分この作業はやりたくありません・・・(^^;

巻き直し・・・

 古いコイルを外したら、次はまき直す作業です。


ノーマルの銅線は0.8mm径ですので、とりあえず1.0mmのUEWを巻くことにします。

UEWはアキバのオヤイデで購入しました、電線屋としては有名なお店です。

1,000 g 購入で約1,200円でした。

※ UEWとPEWは絶縁材が違います、大まかには耐熱性と耐摩耗性が違うのですがKSRの発電機にはどちらでも問題有りません、入手性の高い物を使うと良いでしょう。
ステータの巻き方
ステータの巻き方

上の図はステータのコイルの巻き方を模式的に表した図です。
左がノーマルの巻き方、右がレギュレートレクチファイア対応の巻き方になります。

銅線を解しながら巻き数をカウントして調べましたが、各極ごとに約110回巻いて
あるようです、ノーマルは手巻きで適当に巻いている感じなので多少のバラツキ
があります、左・下・右の順番で巻きます。

ノーマルステータでは右の極で、ライティング系が分岐しています、84巻きめの
位置から分岐していました。

一般的には、「
巻き数=電圧」「線の太さ=電流」として知られていますが、線を
太くすればそれだけ体積を食いますので、同じ体積巻いたときの巻き数は減少し
ます、物理的に巻ける量は限られていますので単純に太い線に変えれば良いと
いった物ではありません、線の断面は円形ですが、占有する空間は 正方形なの
で、0.2mm太くなるだけで36%も断面積が増えます。

純正の巻き数を確保しつつ線を太くするのがポイントです。

 
ひたすら巻く!
巻きあがり!

 根気よく巻き続けてこんな感じになりました。

鉄芯と銅線の短絡がないか確認し、異常がなければワニスで塗り固めて巻き直しは完了です。

焦らずゆっくり集中して巻きます、なるべく密に巻かないと巻き数を確保できません。
ステータ台座にマウント

ステータ台座と接続


 巻き終わったコイルをステータ台座にマウントして、銅線とハーネスを半田で結合します。

結合部に保護チューブをかぶせて短絡を防ぐようにします。


今回はレギュレートレクチファイアに直接入力するため、コイルの両端を黄と桃の線に接続しました。
レギュレートレクチファイアとフィッティング

レギュレータとフィッティング
 完成した強化ステータとレギュレートレクチファイアの配線をします。

車体側のハーネスを加工しなくて済むようにアダプターコネクターを作成しました。

「レギュレートレクチファイアの考察」の項にある図のような回路になるように、サービスマニュアルの配線図と見比べながらフィッティングします。

実車に装着!
実車でフィッティング
 強化ステータをレフトエンジンカバー内にとりつけ、フライホイールを取り付けたあと、純正配線を直流配線へ変更します。

KSR純正のレクチファイアとレギュレータはいらなくなりますので外し、レギュレートレクチファイアの赤線をKSRの白線に、緑線を車体の黒/黄線に、電圧検出ハーネス(黒線)を車体の茶線につなぎました。

ライティング回路で使用されていたKSRの黄線は、直流化に伴いバッテリーから供給するため、茶線とつなぎます、 流れる電流を考えるとバッテリー直結にして、リレーで制御した方がいいとは思いますが・・・


すべての電装をバッテリーでまかなうため、純正の10Aのヒューズでは余裕がないと判断し、20Aのヒューズに交換してあります。
レギュレートレクチファイアのありか
 レギュレータは タンクの下にすっぽり収まりました。

KSR-IではCDIの入っている位置なのですが、 まるで純正部品のようですw
試験運転
レギュレートレクチファイア動作中!
 正しく接続されていることを再確認し 、エンジンを回します、緊張の一瞬です。

強化ステータの発電能力は、無負荷電圧30Vをオーバーする(約3000rpm時)値をマークしましたが、レギュレートレクチファイアを通過することにより、14.7Vに制限されます。

アイドリング時はバッテリーから供給されるため、12Vを下回ることはありません。

ここに直流化KSRが完成しました!

なにげに高回転時には、1Aを超える電流でバッテリーを充電しています、ちょっと過充電ぎみかも。
完成!(と考察)

ステータ巻き直しは初めての経験なので、色々勉強になりました。

完成後、甲府と横浜(250km/5h)を往復するツーリングで実用性を試してみましたが
今のところまったくトラブルなく動作しています。

ステータ強化&直流化の功罪

メリット
 ・アイドリング時でもヘッドライトが暗くならない。
 ・バッテリーに無用な高電圧を与えずに運用できる
 ・35/35wのバルブを楽々点灯できる、いずれ35w HIDに挑戦したい。
 ・電圧が安定したため、社外タコメータなどの電装品を安心して付けられる

デメリット
 ・バッテリーの依存度が高いので、常にバッテリーの点検が必要
 ・最高速低下(発電量が増えるとローレンツ力により抵抗が増す)
 ・地味な改造なので誰も気づかない(T^T)
 ・なによりめんどくさい作業ばっかり・・w

実用度 ★★☆☆☆
難易度 ★★★★☆
お楽しみ度 ★★☆☆☆
バカ度 ★★★★☆
   
総評 ★★★☆☆

あまりオススメできる改造ではありません、まぁこんなことも出来るのかと
お話程度にお考え下さい。

※電気を扱いますので、注意して作業を行って下さい。
 
・火災注意!ショートすると燃えます、ガソリンに引火したら大変です・・・
※電気的知識に自信のない方は当記事をまねないで下さい。
 
・感電注意!KSR程度の発電機でも感電死する可能性はありますので・・

PS:
スーパーカブのステータはノーマル0.8mmでKSRと同じですが、郵政カブは
1.0mm径だそうです。
カブには負けたくないので、1.2mmにまき直すかも・・・・ ムリカナ?

メニューへ

2004/3/19作成
2004/3/22記事修正